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2014年06月 雨の匂い
先月久しぶりに母と子供たちと一緒に苫小牧に帰ってきました。普段北海道には仕事で行くことのほうが多く、久しぶりに降り立ちました。苫小牧は両親の出身地ですが、私にとっても生まれた土地ですし、幼いころはちょっとしたお休みがあると祖父母の家へと泊まりに行っていたので、育ったのは東京といえども、苫小牧は故郷という感覚なのです。
苫小牧はシトシト雨がよく降っているイメージがあります。今回滞在中も見事に雨が降っていました。それもあって、とても懐かしい気持ちになりました。久しぶりに見る駅やよく通った道路、まだ元気だった祖父母とよく通ったお店。雨の匂いがきっかけで、結構たくさんのことを思い出しました。
雨の匂いってわかりますか?
雨の独特の匂いには、きちんとした根拠があるのです。いくつか説があるのですが、ペトリコールとゲオスミンが原因と言われています。
まだ雨が降っていない曇りのときに雨の匂いがすると思うときがありますが、それをペトリコールと呼びます。地中で特定の植物が土の中で発する油が、地面が乾燥している時に粘土質の土壌や岩石の表面に吸着し、湿度が80%と高くなると鉄分と反応して匂いを発します。雨が降り始めると油は流されて、匂いはなくなってしまいます。ギリシア語では“石のエッセンス”という意味だそうで、鉱物学者の造語です。
一方、雨が降った後の匂いは、ゲオスミンという有機化合物の一種が原因です。カビ臭の原因物質でもあり、 土壌中のバクテリアや、水中の放線菌又は藍藻類のある種によって産生され、匂いは湿度が高いほど伝わりやすくなるようです。雨によって土の中から大気中に拡散するため、雨が降った後に匂いがします。こちらは“大地のにおい”という意味の言葉です。
こういった雨の匂いによって、普段は思い出さないような記憶を思い出すことをプルースト効果と言います。マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」という小説のなかで、マドレーヌを紅茶に浸した香りをきっかけに記憶が蘇った場面から、このように呼ぶようになりました。
匂いや香りは鼻から入って大脳辺縁系に到達します。思考や言語機能を司る大脳新皮質を通らないという点がポイントです。大脳辺縁系は、本能的な行動、情動の表出、意欲、自律神経、そして認知や記憶に関与している脳の領域です。そのため、香りが感情や行動に直接作用していると言え、プルースト効果のようなことが起こるのですね。
今年の梅雨は長いらしいですね。雨の匂いがする中で、記憶に残るようなたくさんの出来事が起こりますように。
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