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2014年04月 桜の香り

首都圏などで降った記録的な大雪のために、公園の樹木が倒れる被害が多く発生しました。雪の重みで枝が折れた樹木は東京都内の公園や庭園だけでも1万本を超えたそうです。少しずつ暖かくなってきたこの季節、春のお花見シーズンがどうなるのかと心配されています。
桜といえば、独特のふんわりした香りを思い浮かべる方も多いと思いますが、香りの正体は「クマリン」という芳香成分です。ですが、桜そのものから香りは発せられていないのです。桜の木の近くを通っても桜の香りはしませんよね。「クマリン」は塩漬けにする課程で生成されるものなのです。つまり桜の香りの印象は、桜餅や塩漬桜の香りということです。
クマリン類は植物に広く含まれています。特にセリ科に多く、パセリや明日葉が挙げられますが、よく耳にするのは柑橘類です。柑橘類はフロクマリンによる光毒性があることで知られています。クマリン類はクマリン、フロクマリン、ピラノクマリンの三つに分けられます。そのうちフロクマリンには光毒性(光感作)があり、フロクマリンを含んだ精油を肌に塗って、直射日光に当たるとシミなどの原因になってしまいます。フロクマリンは、紫外線を溜め込む力が強く、それを内側から皮膚へと放出するため、色素沈着などを発生させるのです。そのため、フロクマリンを取り除いた精油、たとえば「ベルガモットFCF(フロクマリンフリー)」のような製品があります。
もちろん、光毒性のように気をつけて使用しなくてはいけないこともありますが、フロクマリンを取り除けるのだという事実にも注意が必要です。精油が持っている成分を操作できるということになりますよね。
精油は、天然の化学物質が、数十から数百個集まってできた混合物です。200~300個とも言われる精油成分は、その成分によって使い分けがされているのです。そのため、アロマテラピーに使用する精油は、100%天然である必要があります。特定の成分だけを抜き出したり、別の植物の精油と混ぜたりしていないか、農薬などの有害物質が混入していないかをきちんと把握しなければいけません。ガスクロマトグラフィーの分析機械によって出される分析表等で、アロマテラピーに必要な成分が、確かに含まれているかどうかを確認することが大切です。人間の操作によって、複雑に成立している精油の成分が変えられてしまうと、元来持っている天然の香りとはかけ離れていくことになり、またそこから得られる作用も異なっていくはずです。
もし塩漬けの桜葉からクマリン類を取り除いた葉を作ったとしたら、あの桜を連想させてくれる柔らかな香りはしないことになりますね。その葉を巻いて作った桜餅は、たいそう味気ないことでしょう。今年は、桜餅の葉もその香りとともにゆっくり味わいたいと思います。

株式会社セラ 町田映子


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