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2013年6月 森の力

統合医療には環境が必要であると訴えてから、森林に入る機会が多くなりました。北海道の下川町、島根県の飯南町には数年にわたり、講演、研修で何度も何度も足を延ばしています。下川町には、いつも泊まる「森のなかヨックル」があり、NPO法人森の生活が管理しています。森に入るには、4つ5つのコースがありますので案内人が必要です。飯南町は町から10キロの島根県民の森の中の「もりのす」に宿泊します。ここはセラリキッドを使って行われるセラピールームがあります。ここも森の中ですが、ただ深い森ではないので、気軽に散策できます。もちろん飯南町にも森の案内人がいます。
日本中どこでも30分、一時間車に乗れば、森があるのではないでしょうか。
ただ森にも大きく問題を抱えていることが徐々にわかってきました。以前下川町で、ここは人工林、ここは自然林と説明してくれましたが、さて人工林と自然林の違いとはなんだろうかと素朴な疑問が浮かびました。また安い外国材が大量に入るようになり、伐ると赤字になり、放置され、下草刈り、枝打ち、間伐をしないために、風が通らない暗い荒れた森林になっている問題があることも実際目にして分かってきました。
植物生態学者の宮脇昭さんは今まで4000万本の木を植え、その土地本来の森を作る活動をしてきています。著書「森の力」講談社現代新書から問題の答えを拾ってみます。
植生【植物生態】は概念として3つあります。1)原植生(原始自然植生=人間が影響を加える直前までの植生)、2)現存植生(人間によって変えられてしまった後の植生=現在私たちが目にしている植生)、3)潜在自然植生(その土地本来の植生)「仮にいま、人間活動の影響をすべて停止したとしても、長い間の人間の活動によって立地や環境が変えられている可能性があるため、すぐに原植生が再現されるとは限りません。そのため、人間の影響をすべて停止した場合に、その土地の自然環境の総和が、どのような緑の姿を支える潜在的な能力を持っているのかを理論的に考察するのが潜在自然植生です。」
日本の潜在自然植生はどのようになっているか。
「関東以西の海岸から海抜800メートル付近までは、シイ、タブ、カシ類といった照葉樹林(常緑広葉樹林)が潜在自然植生。海抜800メートルから1600メートルまでは落葉(夏緑)広葉樹林(ブナ、ミズナラ林)が主な滞在自然植生です。海抜1600メートルから2600メートルの本州中部山岳および北海道の約400メートル以上は亜高山性の針葉樹林で、本州ではシラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガなどが主木。北海道ではエゾマツ、トドマツ、アカエゾマツなどが主木です。」
しかし現在、人が住んでいる照葉樹林域ではこの潜在自然植生は0.06%しか残っていないそうです。これは戦後復興のための建築材として、広葉樹をマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹が造林されてきたのが原因と言われています。陸前高田市は海岸の7万本の松が津波で流され、家屋、車、人を襲ったという。一方潜在自然植生の樹種を防災林として使われた所は車両などの流失をくいとめました。津波だけではなく、火事、台風、洪水、地震にもびくともしないといいます。まず本来の森を大切にし、憩いの場として、また災害防止にと多方面で、森の力を再認識していく必要があります。


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